怪我2010
「だ、大丈夫ですか?」
通りがかりの人だろうけど、声をかけてくれた。
地面に横たわる姿を見て心配してくれたのだろう。
反射的にとりあえず 「大丈夫です」と答える。
とっさに答えてしまったけどそんなに大丈夫な状態ではなかった。
あとで鏡を見て気づくのだけど。
ちかくに倒れていた自転車を起こし、颯爽と(本人イメージ)走り出す。
体を動かすと、いろんなところを痛めてるのがわかる。腕、肩、あご、顔面、ひざ。
そして秋も終わりの夜中二時前だから、風が冷たい。
あちこち痛みを感じる中でも特にあごが冷たい。
冷たくそしてジンジンする。こけたときあごも打ったみたいだ。
下り坂は立ち乗りが気持ちいい。坂に任せて走りおりる。
立ち乗りしつつ片手であごを触ってみる。
まだ自分の状態の確認前だからか、こけて一時気を失っていたことなど全く懲りてはいない。
ジンジンと熱を発しているかのようなあごは、風を切るごとに冷たく感じ、触ったその手にも冷たさを残した。
秋の夜中を走る自転車の風に冷やされて、半分固まりながらねっとりと濡れている血だった。
20cmくらいあごから垂れ下がった血がつららのようで、
下を見るとそのつららが、とめどなく流れ出ている血のようにも見えた。
冷静になり座って自転車をこぐようにする。
どうりでジンジンするわけだ、あごを打ってそこから血が出ていた。
倒れていた場所は家からそれほど遠くなかったので、5分もしないで着いた。
鏡を見ると、自分のことながらその恐ろしい様子に言葉を失う。
顔中傷だらけであごから血が垂れ下がっているという状態。ヤギのヒゲのよう。
傷だらけの顔をとりあえず手当てをしようと、まず洗って傷口の様子をみる。
ほかの部分は擦り傷だったけど、あごはパックリ割れていた。
一度どのように割れてるかを開いてみたけけれど、もう一度割れてるあごをパックリ開いて見るのが精一杯で、それ以上見れなかった。
自然治癒力に任せるにはパックリしすぎていて、そのままでに変につながってしまうことは避けたいので、医者に行くことに。
夜中の二時、懲りずにまた自転車に乗り、近くの救急対応の病院まで。
眠そうな受付、眠そうな看護師さん、眠そうなお医者さん、当然ですね。
夜中に自転車でこけるという間抜けな私に、寝てたであろうところに対応してくれた。
女医さん「私専門ではないので残念ながら、これ(あごパックリ)後残りますね」
私「ぜんぜん何でもいいです、くっつけば、仕方ないです。すいません夜中に」
そんな感じで縫ってもらう。中外計6針と言っていた。
ついでに、顔面(右目の下)と両手の甲の傷も手当してもらった。
翌日テニスの大会観戦
痣だらけで腫れた顔、右目の横とあごにはガーゼが当ててある。そんな様子での観戦。
知り合いの女性(テニスの試合に参加していたかな?)に会う。
私の痣だらけの腫れた顔のことを興味深そうに聞くので、自転車でこけた話をすると、
なぜか「カッコいい」と言われる。少しずれたおばさんだ。
ほかの人は、ひきつつ心配してくれる。という普通の反応。
さらにその翌日、
会社に行く途中に薬局による。普段飲みのもとかを買いにいく薬局。
何も無いときには、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」という、普通の店員さんなのだけれど、
この日は、「いらっしゃい・・・ぷっ、どうしたのその顔??」と、顔を見るなり笑いながらの質問!
たいていは心配した感じで、どうしてそうなったのかと、心配そうに興味を示すところを、
ただ、その状況、状態を笑っていた。
笑われたという意外性はあったのけれど、怒りや憤りとかは感じなかった。
なぜかそこで私はそのおっさんのことをいっきに信用してしまった。
当然のように心配そうにしてもらうより、ただ笑われたほうが、なんか好感を持てた。
しばらくは消えない怪我を顔にして、
それに対する世間の人や知り合いの反応はさまざまでした。
しかし強烈に印象に残っているのは。
カッコいいといったテニスのおねい(おば)さん、
いきなり笑った薬局のおっさん、
この二人でした。
そして強烈な印象とともに。
ふつうに心配そうにしてくれる人たちよりなぜか信用できるような気がした。
しかしその後、顔の傷痕が原因で新宿で職務質問を受ける。
二回も。
まあ、そんなものかなとも思う。
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