朝、目が覚める。
話し声が聞こえてくる。
2、3人ではなく結構大人数だ。
寝ぼけながら気づいたそれをたしかめるため起きようとするが、
昨日の疲れが残っているからだろうか、体が硬く動かない。
男3人で寝るにはぎりぎりのテント、ほかの2人は起きていない。
昨日は確か15時間ぐらい歩いた。
山登りではないけど、歩きにくい大きな丸い石の海岸線。
歩きにくくなければ、8時間かからないくらいの距離。
寝ぼけた状態からやっと頭が動き出し、状況を把握する。
知床岬へ歩き始めて2回目の朝・・・女滝の下・・・海岸
さっきの人の声は波の音であると考える。
公園でテント張ってたわけではない。
道路もないようなところであんなに人の声が多いわけはない。
でも、やはり人の話し声のようだ。
起きてからまだ、テントの外を見ていない。
夜は真っ暗だったテントのなかも、
朝になると太陽の出現とともに明るくなる。
外からテントの中身がわからないのと同じくらい
中からも外の様子はわからない。
もし、囲まれててたら?
テントを囲むとしたら・・・人?
言葉をしゃべる、人以外の何か?
こんなことを考えている間もやはり
話し声は止む気配がない。
隣に寝ている吉田をを起こす。
話し声らしい音が聞こえないかと、確認してみる。
もしここであれを奴が聞こえないのであれば、俺の幻聴ということか?
「え・・・」
かれの寝ぼけた頭が急速に動き出したのだろう、
顔が一気に真剣な、ちょっとへこみ顔になる。
「え、なんで?」
それは俺も知りたい。
知るためにはテントから出て外の様子を見るしかない。
テントで寝ていて、状況としてなにがイヤか考える。
・天災系、
・動物系、
・族・ヤンキー系、
・超常現象系
確かにここは海岸で、津波とかきたら海にさらわれてしまうけど、話し声とは関係ない。
動物といえば知床岬は熊だけど、熊は話さない。
テントを囲むような大人数の話し声といえば、ヤンキー・族系みたいだけど、道がないところまでわざわざ歩いてくるアウトドア派のヤンキーがいたとしたらそいつらはリアルに山賊だろう。山賊なら起きる前にすでに襲われてそうだ。
やはり超常現象系か?人の声がするけど、人はいない。
それとも、「君たちは完全に包囲されてる」系?
どんな間違った情報で俺らを確保に動いてるんだろう。
たしかに、知り合って4日しかたってない3人だけど・・・まさか
天災系は来るタイミングを選べない。
山賊がいるという情報は聞いたことがない。
超常現象だとしたらこっちの気の持ちようだ。
犯罪者の可能性の少ないことを希望すると、
熊が一番いやだ。
と勝手な状況分析が結論に達するまでにかかった時間は吉田のへこみ顔をみてから5分くらい、
すでに可能性の問題ではなく、どんだけイヤかが判断基準になっているけど、
思い切ってテントの外に出る。
しっかり靴を履き大き目のナイフを持って。
気持ちは「熊上等!・・・でもお化けはいやだ」で。
やはり、囲まれている。
たくさんの人の声が聞こえていたのは、そこに人がたくさんいたからだ。
海の上で、小船を寄せ合ってなにやら世間話。
しかも20艘くらいの小船には1人しか乗っていない。
暴走族でいうと、単車20台20人の族だ。2ケツは一人もいない。走り重視なのだろうか?
しかし集まってすることといえば、世間話。
族でいえば集会?対立する集団がいたら抗争に発展するのかな?
でも、おっさんたちは海の船の上なので、族だとしたら、海賊になる。
大船に多人数ではなく1人小船を集めた、海賊としては新しいジャンルの海賊だ。
知床の朝僕らが寝ていた海岸の海の上は、
おっさんたちが早朝船を出して世間話をしにくる場所だったということか?
そんな海の上の船のおっさんたちの間になにやら緊張感がはしる。
世間話をやめて、ある程度の間隔をあけるように船を移動して、
長い棒のようなものを準備する。
朝6:00ジャスト
今年の昆布漁のはじまり。
この日のこの時間から解禁だったようです
さっきまでの和やかな雰囲気とは一転して真剣な顔なおっさんたち。
海中に巨大なフォークのようなものを突っ込みグリングリンと巻き取っては船に水揚げ。
何度もそれを繰り返し、小船が傾くくらいの量収穫して、大急ぎで帰っていった。
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